開催概要
山、森、河、林、田と畑。浜と海。
天と地の恵みを暮らしの中で実感できていたとき、
人と自然の間には神が居ました。
裏山や川辺、浜辺で薪(たきぎ)を得、燃料としていた時代、
囲炉裏の火はそのままそこに生きるひとの暮らし全体の「魂(ひ)」でもありました。
かまどはその土地の恵みを受け取る火のうつわであり、神棚にも折々の火が灯され祭られていました。
風雨と付き合う生活には土地に根ざした物語がありました。
しかしながら、いまや多くの家にあった「火」は消え、囲炉裏もたたまれました。
火の在り処は火力発電所の中、自動車の中、ガス管の中、
より大きなものと繋がるための仕組みの中に移り、
家族や村という顔の見える範囲でまとまっていた人の生活は、より広く、
大きなものへ接続されるようになり、茶呑み話にテレビやインターネットが介在するようになりました。
稲作をはじめとした農業も資本と効率を求めて機械化され、
同時に生活とともにあった手業の技術もだんだんと息をひそめていきます。
わたしたちの「暮らし」の骨格は数十年の間にも大きく様変わりました。
皆に望まれて変わったのか?
知らぬ間に変わってしまったのか?
かつての土地と対話し天を仰ぐような暮らしを知る人は少なくなり、
若い世代はそのような暮らし方があったことさえ知りません。
わたしたちはいま、過去から何を引き継ぎ、何を活かしていけば良いのでしょうか?
そこにある土地と深く関わる生活を目の当たりにして来た方々を招き、
会場参加者と共に考える座談の場が出来ればと思います。